植木職人の短編小説– archive –
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第五話 言葉のないモッコクと最後の仕上げ
「言葉より、そういうことのほうが、ずっと丁寧な人なんです」 家を出た夫が長年大切に育てていたモッコクの木。庭師が密集した枝葉を透かし風を通すと、不器用な夫の確かな手入れの痕跡が姿を現す。残された妻が、整えられた庭木に静かな家族の記憶を見出す物語。 -
第四話 金木犀の残り香
「父さんが帰ってくる匂いがする」 巨大化し、迷惑となった金木犀を巡る母子の葛藤。職人が枝を間引き光を通すと、鼻をつく濃厚な香りが優しく懐かしい匂いへと変わる。秋の風が、老いた母の元へ大切な夫の記憶を呼び戻す。 -
第三話 頑固オヤジと、夕焼けの松
「機械なんぞ使いやがって! 帰れ!」 頑固なゲンさんが守りたかったのは、亡き妻と見上げた松の記憶。ハサミと素手で葉をむしる静かな手仕事が、夕焼けの空に誇り高き「横綱」の姿を呼び戻す。 -
第二話 暴れる桜と、三年後の背比べ
「パパ、さくらさん、はだかんぼになっちゃった」 YouTubeを真似て切られ、無惨な姿になった桜。将来の幹となる一本の枝を選び出したとき、娘の成長と競争するような、新しい三年の時間が動き出す。 -
第一話 沈黙する梅
「もう、根元から切っておしまいなさいな」 花を咲かせなくなった梅の古木。 職人の鋏が入ったとき、庭の空気が静かに動き出す。
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