ヤマボウシを美しく保つ剪定を図解で解説!失敗しない最適な時期と手順

ヤマボウシは自然な樹形の美しさが魅力ですが、手入れを怠ると枝が混み合い、花付きが悪くなったり、病害虫が発生したりします。そこで、剪定で、木の健康と美しさを守ることが大切です。 この記事では、剪定の時期、どのように切るのかを図解でわかりやすく解説します。「切りすぎて枯らしたくない」「来年も美しい花を咲かせたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
記事のポイント
- 剪定に適した時期
- 透かし剪定の重要性
- 剪定のやり方【図解付き】
ヤマボウシの剪定は「透かし剪定」が基本

ヤマボウシは、初夏に咲く清楚な白い花と、秋の紅葉、赤い果実と、一年を通じて私たちの目を楽しませてくれる人気の庭木です。その魅力を最大限に引き出すためには、適した剪定が欠かせません。
透かし剪定が最適な理由
ヤマボウシの剪定は、自然な樹形を活かす「透かし剪定(間引き剪定)」が最適です。ヤマボウシは、本来持っている樹形が非常に美しいため、無理に形を整えようとせず、枝の密度を調整する程度で十分だからです。
しかし、誤った方法、特に強く切り詰める「強剪定」を行うと、木の健康を損ない、翌年花が咲かなくなるなどの深刻な影響が出ることも。正しい剪定により、ヤマボウシの健康を維持できます。
ヤマボウシ剪定の最適な時期は「夏」と「冬」の年2回
ヤマボウシを健全に育てるためには、年に2回の剪定を行うのが理想的です。剪定の目的によって、最適な時期が異なります。
| 時期 | 目的 | 切り方 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 夏(花後:5月中旬~7月) | 風通し改善、軽い樹形調整 | 軽い透かし剪定、花がら摘み | 花が終わり、樹勢が落ち着いた時期。軽い剪定で病害虫を予防し、翌年の花付きを準備します。不要な枝が目立たなければ、無理に剪定しなくても問題ありません。 |
| 冬(休眠期:11月~2月) | 樹形維持、不要枝の整理 | 本格的な透かし剪定(メイン) | 落葉後で葉がなく、樹形全体を見やすい。木が活動を休止しているため、負担が最も少なく済みます。 |
剪定を避けるべき時期
特に注意が必要なのが、新芽が伸び始める春先(3月〜5月)です。この時期に剪定を行うと、切り口から多量の樹液が流れ出し、木が水分や養分を失って樹勢が弱ってしまうため、避けるようにしましょう。
【重要】強い剪定(切り戻し)の危険性
ヤマボウシは、枝を途中で大きく切り詰める「切り戻し剪定」や、幹に近い太い枝をバッサリと切る強剪定で、木の健康を損なう恐れがあります。
- 花が咲かなくなるリスク: ヤマボウシの花芽は前年の夏に形成されます。強剪定で多くの枝を失うと、花芽自体が失われ、翌年以降、花付きが悪化してしまいます。
- 樹勢の衰え: 太い枝を切ると、木にとって大きなダメージとなります。切り口から病原菌が侵入したり、回復に多くのエネルギーを要したりするため、木全体が弱ってしまうリスクが高いです。
ヤマボウシの剪定は、全体の形を小さくすることよりも、枝が込み合った部分を間引いて風通しと日当たりを良くすることが、剪定の成功につながります。
【図解でわかる】ヤマボウシの剪定で「切るべき不要な枝」の見分け方

ヤマボウシの透かし剪定の基本は、どの枝を切るべきかを正確に見分けることです。樹形の美しさと木の健康を保つため、主に以下の5種類の「不要な枝」を見つけて処理しましょう。
①樹形を乱す「徒長枝(とちょうし)」
勢いよく天に向かって垂直に伸びる「徒長枝」は、樹形を乱し、栄養を無駄に消費するため、優先的に剪定します。
徒長枝は、他の枝よりも太く、勢いがありますが、花芽をつけにくく、放置すると樹冠(木の傘の部分)を不格好にしてしまいます。
- 見分け方: 他の枝と比べて極端に太く、上や横に勢いよく飛び出ている枝です。
- 切り方のコツ: 基本的には、付け根(分岐点)から切除し、根本から取り除くのが望ましいです。ただし、残したい枝であれば、途中の外芽の上で切り詰めることも可能です。枝を切る位置の判断が難しいことから、この作業は慎重に行う必要があります。
②日当たりと風通しを悪くする「内向枝」「絡み枝」「並行枝」
木の内部の健康を保つために、以下の3種類の枝を積極的に間引くことが重要です。
- 内向枝: 幹や枝の中心に向かって伸びている枝。木の内部が混み合い、日当たりと風通しを悪化させ、病害虫が発生しやすい環境を作ります。
- 絡み枝: 他の枝と交差したり、絡み合ったりしている枝。枝同士が擦れて傷つき、そこから病原菌が侵入するリスクを高めます。
- 並行枝: ほとんど同じ角度で、上下に二本並んで伸びている枝。どちらか一方を間引いて、残った枝に十分な光と栄養がいくように調整します。
これらの枝は、木の根元に近い部分から切り落として、枝の密度を下げるように意識しましょう。
③枯れ枝、病気の枝、下向き枝
他にも、枯れ枝や病気の枝、下向き枝も剪定の対象です。
- 枯れ枝・病気の枝: これらは病害虫の住処となり、木全体の健康を脅かすため、見つけ次第、健康な部分まで遡って切り落とします。
- 下向き枝: 樹勢を弱らせるほか、地面に近すぎると病害虫の被害を受けやすくなるため、これも付け根から間引いて処理します。
ヤマボウシを美しく保つ「透かし剪定」の手順

切るべき枝がわかったら、いよいよ剪定作業に入ります。失敗なく美しい樹形を保つための手順を解説します。
ステップ1:枯れ枝・病気の枝を優先的に根元から切り落とす
剪定作業は、木の健康と衛生面を最優先して、枯れ枝や病気の枝を取り除くことから始めましょう。
他の枝よりも優先してこれらを処理することで、作業中のハサミやノコギリを通じて病原菌が健康な枝に移るのを防ぐ効果もあります。病気の枝を切った後には、必ず使用した道具を消毒するよう心がけてください。
ステップ2:混み合った場所の不要枝を間引き風通しを確保する
次に、木の内部が最も混み合っている部分を狙って、不要枝(徒長枝、内向枝、絡み枝など)を間引いていきます。これが透かし剪定の中心となる作業です。
- 内部の確認: 樹冠の外側からだけでなく、内部を覗き込み、特に日当たりが悪くなっている場所を見つけます。
- 間引く枝の見極め方: 複数の枝が密集している箇所から、細く弱い枝、自然な流れに反する枝、絡み合っている枝を選び、根元に近い部分から切り落とします。
- 切りすぎないコツ: 一度に大量に枝を切ると木が弱るため、「全体の3分の1以上は切らない」ことを意識しましょう。
ステップ3:全体のバランスを見て飛び出しすぎた枝を整える
最後に、樹形全体を一歩下がって眺め、自然な形を保ちつつバランスを調整します。
- 自然な樹形を意識: ヤマボウシは自然に整った樹形を作るため、過度に人工的な形にしようとせず、軽く整える程度に留めます。
- 飛び出し枝の処理: 樹冠から飛び出しすぎた枝がある場合は、その枝の途中の外側を向いた芽(外芽)の数ミリ上で切断します。これにより、次に伸びる枝が樹冠の外側に向かって伸びていき、美しい樹形を保ちやすくなります。
- 忌み枝の処理: 大きく形を崩している枝や、樹形を乱す枝は、主枝との分岐点で切り落とします。
樹高を抑えたい場合は「芯止め」を

ヤマボウシの高さを抑えたい場合は、休眠期(11月~2月)に「芯止め」を行い、樹高を調整します。
ヤマボウシは放置すると10m以上になる高木です。自宅の庭で大きくなりすぎるのを防ぐため、主幹(中心の太い幹)の先端を途中で切り詰める芯止めが必要になります。
剪定に適した時期
透かし剪定と同じ冬の休眠期(11月~2月)に行います。太い枝を切るため、木に大きな負担がかかるからです。
剪定の方法
理想とする高さ(地上から2~3mが目安)で、枝が四方に分かれている枝のすぐ上をノコギリなどで切断します。
芯止めの注意点
幹が太くなる前の若木のうちに済ませるのが理想です。芯止めは一度にバッサリと切らず、木への負担を減らすため数年に分けて高さを調整するのが理想的です。
一般的な剪定のやり方について、「図解で解説する剪定のやり方!効果的な木の手入れと剪定のコツを伝授」でも解説していますので、参考にしてみてください。
失敗を防ぐ!ヤマボウシの剪定作業で注意すべき3つのポイント

剪定作業を安全に、かつ木の健康を損なわないように行うための重要なポイントを解説します。
注意点1:切り口を保護剤(癒合剤)でケア
直径2cm以上の太い枝を切断した場合は、必ず専用の保護剤(癒合剤)を塗りましょう。剪定でできた切り口は、人間でいう「傷口」と同じです。
特に太い傷口は、そこから病原菌や害虫が侵入するリスクを高めます。癒合剤は、切り口をコーティングして乾燥を防ぎ、病原菌の侵入を阻止し、木の自然な回復を助ける役割を果たします。塗布する際は、切り口全体を漏れなく覆うように丁寧に塗布してください。
注意点2:ハサミやノコギリは清潔なものを使用
使用する剪定道具は、作業前後に必ず清潔な状態にしておくことが大切です。
汚れた道具は、病気を持った枝から健康な枝へと病原菌を運んでしまう「媒介」となります。
作業前にアルコールや希釈した塩素系漂白剤などで刃先を拭き、清潔にしておくことで、病気の伝染リスクを大幅に下げることができます。切れ味の良い道具を使うことは、切り口をきれいに保ち、木の回復を早めることにもつながります。
注意点3:高所や太い枝の剪定は無理せずプロへ相談
安全かつ理想的な樹形を維持するためには、難易度の高い剪定は無理せず専門家への相談を検討しましょう。
自力での剪定も可能ですが、「木が高くなりすぎて手が届かない」「太い枝をどう切ればいいか分からない」といった課題に直面することがあるからです。
まとめ:剪定方法を図解で理解しヤマボウシを健やかに育てよう
ヤマボウシは、毎年適切な時期に不要な枝を剪定することで、病害虫の被害を防ぎ、翌年も美しい花を咲かせてくれます。ヤマボウシを剪定する手順、不要な枝の見分け方を理解し、切りすぎないことに注意してヤマボウシを剪定してみてください。正しい剪定で、ヤマボウシの美しい花を楽しめるでしょう。

